山に行くと、多くの人気山域ではテントを張る場所が決められていて、そこは「テント指定地」などと呼ばれています。
それはだれが「指定」しているのか?
山小屋でしょうと考える人が多いかもしれないが、違います。山小屋は指定地の管理・運営を委託されているだけで、指定の主体ではないのです。
ではだれが?
これがよくわからないのです。25年も山岳メディアに携わっていながら、ここについては私も詳しいことをほとんど知らない。それは私だけではなくて、山と溪谷にしろ岳人にしろPEAKSにしろ日本山岳・スポーツクライミング協会にしろ日本山岳ガイド協会にしろ、テント指定地の全貌を把握している人っていないんじゃないだろうか。
なぜ知らないのかというと、知る必要がなかったから。テント指定地というのは、多くの場合、山小屋の付随業務的にゆるやかに管理されてきたし、利用料も1人500円程度と安いもの。そこに義務や権利を意識させるようなものではなかったからです。
ところが最近はそれも変わってきました。コロナのせいで利用料は急騰。1人2000円なんてところも現れています。さらにはSNSの影響。「闇テン」なんて言葉が登場したように、指定地に張らないヤツは登山者失格という空気も醸成されてきました。
となると、そもそもの指定を行なっている責任主体はだれなんだ、という疑問が生じてくるのも必然。私は生じました。
そこで調べてみましたが、仕事の片手間にちょっと調べてみただけではまったくわからん! 全国の指定地一覧表などがあるわけではなく、指定の主体も事業執行の主体もわからない。断片的な情報が集まってくるだけで、全貌がわからないのだ。
どうもこれは登山道と同じで、慣習と縦割り行政と無関心が複雑にからみ合った世界で、そんな簡単にわかるものではなさそうだ。
ということで、断片的な情報をここに溜めていくことで、気長に調べていくことにしました。新たなことがわかり次第ここに載せていく更新型の記事にするので、なにかご存知の方はぜひお知らせください。下のコメント欄でもいいですし、ここでもかまいません。
【6月11日追記】
どうも以下のようなことなのではないか……というところまで考察が進んできました。合ってるかどうかはまだわかりません。
1)テント場ができる(戦前)
2)林野庁が事後承認(戦前~戦後)
3)環境庁ができてそちらに指定権限移管(1970年代以降)
4)以降も実質的業務は土地所有者の林野庁が所管
5)国有林外に作られたテント場の管理状況は場所によってまちまち
■日本の国立公園(環境省)
各公園のページに「公園計画書」という資料があり、野営場についての記載があることが多い
■中部山岳国立公園(北アルプス)の公園計画書(PDF/環境省)
4ページと6ページ、および104ページ以降に野営場の一覧あり
■中央アルプス国定公園の公園計画書案(PDF/環境省)
50ページ以降に野営場の一覧あり
■林野庁のコメント
森山が公式ホームページの問合せコーナーから質問したところ、以下のような回答でした。
「南アルプス、北アルプスなどの国立公園、国定公園に指定されている場所では、自然公園法を所管する環境省の所管となります。その他の場所でのキャンプ場につきましては、所有者(地方自治体、個人など)あるいは管理者が設置しているものと思われます。国有林では林野庁がキャンプ場を設置し、管理、整備を行っています。」
膨大な数のPDFがリンクされており、見るのはめちゃくちゃ大変
■北アルプスのある山小屋
テント場についての窓口は林野庁であると(森山が)聞いたことがあります
■関東近郊のある山小屋
自然公園法にはこれまでテント場の指定という条項がなく、テント場は慣例によって運営管理されていたが、近々、なんらかのかたちで明文化する等の議論が予定されているとのこと。
テント場が国有林である場合、管理者が林野庁から借りるという形になっているはず https://t.co/spGabnpVmz pic.twitter.com/LpSKRXyRYh
— 小尾和男@Kindleから山岳遭難防止の本を出してます (@DqDHHvvZzmgOa7h) June 10, 2022