2020年2月27日木曜日

経歴詐称記事のあとがき的なもの


「山写」なる人物のこと


こういう記事を書きました。


登山ライターとしてこういうことに関わるのは、気が進むものではありません。そもそも人の批判をするのは気が重い行為であるし、やたら時間と神経を使うわりにいいことがあまりないからです。ネット上でへんな誹謗中傷を書かれたりもします。


以前、栗城史多さんについて私が書いた記事がかなり注目されたことがありました。以来、登山の正義を追求する”山岳警察“としての役割を期待されているような気がするのですが、積極的にやりたいとは思いません。というのも、それをしたことろで、私には実利がないからです。


私が仕事をしている登山・クライミングメディアというのは、趣味レジャーのものであって、基本的には読者のためになるポジティブな情報を提供することがテーマであります。そこでは闇を暴くようなネガティブな記事はあまり好まれません。私が文春の記者だったら違うのでしょうが、登山界では、微妙な案件にすぐ首を突っ込む危ないライターとして避けられてしまうおそれがあります。


それでもこういうことをやってしまうのは、第一に、本当のことを知りたいからです。正義ではありません。求めているのは真実です。私は真実を知りたいという欲求が人より強いのだと思います。デマや嘘に踊らされることがものすごく苦痛なのです。自分が踊らされるのもいやだし、踊らされている人の姿を見るのもいやだ。


東日本大震災で原発事故があったときや、STAP細胞事件があったときなどは(最近ではコロナウイルスも)、自分には判断不能な情報が飛び交い、何が真実なのかまったくわからない状況が続いて、個人的にはとてもストレスでした。本当のことが知りたい!


首を突っ込む第二の理由は、本当のことを伝えるのが専門家の仕事だろうと思っているからです。原発事故のときもSTAP細胞のときも、おそらく真実はここだとわかっていた専門家はいたはずだと思います。でも伝え方が下手だったり、内部者ならではのしがらみがあったり、さらには陰謀論が好きな人が事態を混乱させたりして、そういう人の声が表に強く出てこなかったのでないか。


山写さんの件でいえば、私にはすぐわかってしまったような嘘でした。でも、こんな稚拙な(と私には思える)嘘でも、カンチェンジュンガとマナスルの違いを知らず、ヒマラヤン・データベースなど存在すら知らない人にはわからないのだ。ということを、5ちゃんねるやツイッターで交わされている議論を見ていて強く感じました。これは栗城さんの件のときに感じた感覚とまったく同じものでした。


そこでは、意図的な嘘や間違った思い込みでも、伝え方が巧みであれば世論は容易に流されてしまう。ならば、だれの目にも動かしようがない真実を、事情をよく知っている専門家がガツンと立ててやらなければいけない。それがこの世界でメシを食っている人間の使命であろう。


カッコよくいえば、そういうことが、こういうことをやってしまう動機です。所詮、自己満足ではあります。でも、だれかの役に立っていることを願っているし信じてもいます。


21 件のコメント:

  1. 森山さんは世間に流されず、風当たりがきつくても関わってしまう方なのですね。
    皆、深くを知ろうとせず表面だけで判断しがち。
    情報が無いのもありますが、外野で無責任な事をワイワイ言ってるのは楽だし、そもそも自分には無関係だと思ってるからではないでしょうか。

    私もその内の1人です。

    険しい道を進もうとする森山さんを尊敬します。
    でも敵をたくさん作り、御自分の首を苦しめないよう慎重にして欲しいと願ってます。

    筋を通し逃げたくなくても、逃げる時も必要性かと思います。

    知識がある方から…私の様な末端の人とは知識、経験、理解力に大差があるので、どのレベルの人に伝えたいのかによって反響も変わっていきますものね。

    難しいと末端の者は話についていけず…結果、真実か分からないながら週刊誌のような面白いネタの方を真実と思ってしまうのでしょう。

    私自身…面白い記事は好きですが、裏付けなく人を傷つける面白い記事って言うのは疑問に思います。
    でもそれが売れるのだから誰を責めたらいいのやら…

    自己満足ばんざい♪ですが、苦労ばかりされませぬように…

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  2. 誰かがやらねばならないことで、その順番がたまたま巡ってきた、ということだと思います。

    大なり小なりどこの世界であっても、その人に応じたこういう出番というのは回ってくるのだなと感じています。自分の影響力というか、そういうものに応じてやりたいこととやるべきこととが一致してしまい、やらざるを得なくなる、というイメージです。有名な人や著名な人の暴走を止めるためには、同じくらい影響力を持っている人がやるしかない。

    私個人としては、森山さんはやるべきことをやったと思いますし、これは「名無しさん」のような人たちでは止めることができず、森山さんだからこそ成し遂げることができたことなのだと考えます。

    登山ライターのお仕事応援しています。がんばってください!

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  3. この山写さんのこと自分は登山はしないのですがHPを以前から見ていてなんとなく怪しいなと思ってたのが当たってよかったです笑

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  4. インターネット上で堂々と虚偽の経歴を語る方が増えている状況下で、
    今回の勇気のある主張は、大きな意義があると思います。

    その上で、1点だけご指摘をさせて頂いても宜しいでしょうか?
    リンク先のaタグにrel="nofollow"を入れて頂きたいです。詳しくは添付URL画像の赤枠内にあるaタグをご覧下さい。
    https://i.imgur.com/jpNljmK.jpg

    rel="nofollow"を付けずにリンクを貼る行為は、結果的にリンク先のサイトのパワーを上げてしまう行為です。突然のコメントで不躾ではございますが、どうかご思慮ください。

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  5. 簡単に騙されて飛びつく人も罪

    騙される人が更に騙される人を産む
    偽レビューみたいな役割になってる

    インターネットは自分の頭で思考して判断出来ない人を増やしてる
    人が勧める物を買い 人が褒める人を好きになる
    そこに自分の思考はない

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  6. 初めまして 匿名で失礼します

    丁寧かつ適切な批判で、こういった記事を執筆できる人がいることに驚きました。

    SNSの反応を見るに、山写氏や、その写真に魅せられた人は少なくないのでしょう。
    しかし、誰かや、誰かの大切にしてきたものを踏みにじる行為は到底許容できるものではない。山写氏の人物や、その写真に魅せられた人ほど今回の件はよく心に留めておかなければならないと思います。

    何より山写氏本人が周りの人の心情を理解し、今後の活動に資することを願っています

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  7. 栗城さんの時もですが
    私は森山さんは怖い人だと思いました。

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    1. 不正を告発した人を怖いと思う人は、自分も不正をしている人なのです。
      それが世の常です。

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  8. あなたのことが、凄く嫌いです。ろくな登山歴がないのに、人のことを批判して。文章も写真も、並。すべてにおいて、特に優れているわけじゃない。人に誇れるようなことをしてから、人を指摘しなよ。

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    1. 森山憲一さん。あなたのことだよ。何1つ、成したことがないあなたが、人のやってることを指摘する資格がない。

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    2. これだけ完成されたロジックで、かつ賢くも優しく温かい文章を読んで、なんでそんな感想になるのか全く分かりません…。会話する気も森山さん本来の意図を汲み取る気持ちも一切なく、あなた誰の何にそんな憤ってるんです??あなたが嫌ってるのは何かの虚像ですよ多分。一方的に具体例もなく感情論を並べ立てて、第三者から見たらタチの悪い当たり屋に見えます。想像するに自分の信仰していた何かが森山さんの文章で傷つけられたと感じての八つ当たりかなぁと、カルト教団の教祖が逮捕された時の信者と同じ心理に思われます。

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    3. たまごさんに同意します。何を憤っているのか?全くわからんです。

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    4. 森山さんを非難してる方は、よっぽど山写さんを信望していた方なのでしょう。それが虚構まみれだったと知ってショックで現実を受け入れられないのはよくあること。少し前に起きたジャニーズ問題でもそう。
      旧ツイッターをずっと見ていたら誰でもわかります、登場した頃から宗教っぽい匂いが凄かったし、上から目線も相当でした。何度かやりとりもしてましたが彼は間違いなくそれに酔いしれてるようでした。さすがにその発言は・・・と思って少しでも批判めいた意見などすれば、本人じゃなく彼を辛抱している"信者"から袋叩き状態です。それを目の当たりにした時、かなり登山界っておかしな人が多い世界だと知りました。
      信望してる人にはわからないかもしれませんが、ごく一般的な人からしたら、彼の虚構なんか森山さんのような専門家でなくても見抜けます。というか、これが見抜けなかったら商売も投資も何も出来ませんて。
      逆に、証拠写真すら出さないのに何でも信用させてしまう彼のスキルというか・・・そこは今でも凄いな、と思ってます。まぁ悪い意味ですけどね。

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  9. 登山業界、特にクライミングや海外遠征など先鋭登山に関わっていた方なら森山さんの本当の肩書きをまず知っています。所謂「知らなきゃモグリ」というやつです。

    出せば業界の内外で水戸黄門の印籠並の効力がある肩書きですが、なぜかご本人は出したがらないようなので私もここでは書きません。調べてみてはいかがですか?。

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  10. ブログ主の森山です。
    コメント欄がなんとなく不穏になってきております。
    いい機会かもしれないので、一応、このブログおよびSNSの運用ポリシーを書いておきます。

    ■匿名の投稿には原則的に反応しません
    書いているのがどういう人なのかわからない投稿には基本的に反応しないことにしています。どういう人なのかわからない以上、書かれていることが正しいのかどうか判断できないケースが多いし、文字の背後にあるニュアンスもくみ取れないからです。ブログのコメント欄とツイッターはこういうポリシーで運用しているのであまり返事をしませんが、ご了承ください。もちろん、センシティブに内容をくみ取る必要のないものや、具体的な質問があった場合などはこの限りではなく、反応することもあります。とくに質問にはできるだけ答えるようにしています。

    ■コメント欄もひとつのコンテンツ
    このブログのコメント欄はノーチェックで開放しています。ブログ本文とは違った角度の意見があったり、異論があったりというのも、ブログ本文を補強してくれるひとつのコンテンツと考えているからです。栗城史多さんの記事を出したときに、コメント欄があまりに荒れて、一時的に承認制にしたことはありますが、手間がかかるので、ほとぼりが冷めてからノーチェック制に戻しました。もちろん、直接的な悪口を読むと気分はよくないですよ。まあ、でも、そういうことも含めて、これも社会のひとつの映し鏡なのだという考えで、こういう運用にしています。

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  11. 曖昧な人が公に山写さんを暴くより、森山さんの様な人物が時系列でことの経緯を公にする事は意味があると思う。
    山写さんを叩きたい訳ではなく、だからこそこれまでも静観していた訳で。
    但し山写さんの行い次第では第三者を危険に晒す時が出てくるかもしれないし、山写さん本人も実力を伴わない嘘が故大事故へ繋がるかもしれない。
    または虚偽のせいでメーカー他に損害を与えかねない。

    公の立場で発信する力のある森山さんが発言した事で当事者含め各方面、いまがタイミングだっただけだと思います。しおどき。
    山での事故が無くて良かったじゃないですか。

    確かに虚言はよくない。
    まず嘘なんかつかなくていい。
    山の中にいてその嘘で自分が苦しくならないのかと思う。
    良かったじゃん。解放されて。
    嘘だけどそれを信じてくれた人からの敬意は一瞬でも気持ちが良かったんだろうなと推測する。

    長閑な良い所にいるんだから、心機一転で山へ挑んで欲しいと思うよ。余計な見栄なんか捨ててさ。

    と思います。


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  12. 三重県在住の山本と申します。
    記事最後に「所詮、自己満足ではあります。」と書かれていますが、そういうスタンスなんですね。
    これからも誰かの役に立つ記事?誰に対してのかわかりませんが、よろしくお願いいたします。

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  13. こんなに情報が溢れた世の中なのに、本当に必要な情報は自分から取りに行かなければ手に入らないことを知りました。私は山写さんの記事を参考にカメラを始めた人間です。DXとFXの違いもよく分かっていなかったのですが、山写さんの記事から必要な機材や知識、心構えなどを多く学びました。正直なところ自分にとってはとてもプラスになった事ばかりだったので、詐称にまみれた人物だったことに心底驚いて今に至ります。お世話になった学校の先生が逮捕されたような心境でしょうか。あいにく「坊主憎けりゃ」と割り切れない人間ですので、この複雑な心持ちもまた人生の教訓として前に進みたいと思います。

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    1. 影響を受けた登山家がその後実績を詐称していたことが判明した……という経験が私にもありますので、お気持ちはわかる気がします。もう30年も前のことなのに、いまだにその登山家を否定しきれない自分がいるんですよね。まさに複雑な心持ちです。

      山写さんに関しては、登山や写真についてそれほど間違ったことは言っていなかったという印象です。なので、そこから知識を得ていたとしても問題あるようなことにはならないかと思います。

      ひとつだけ気になっていたのは、山岳写真を過酷で危険なものだと繰り返し主張していたところ。登山ですから安全性を強調するのは間違っていないのですが、それにしてもさすがに言い過ぎで、読者をおかしな方向に誘導する危険性があると感じていました。ここに関しては、そんな過酷なことをやっている自分というイメージ作りのための言説だったのでしょう。

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  14. 信者に対して一言。馬鹿に付ける薬は無い。

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    1. 至言。
      仰るとおりだと思います。

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