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2015年10月14日水曜日

佐藤裕介インタビュー


15日発売の『岳人』に、佐藤裕介のインタビュー記事を書きました。
岳人がモンベル(正確にはネイチュアエンタープライズ)の経営に移ってから初めてお話しをいただき、自分のスケジュール的にはかなりきびしいときだったのですが、テーマが佐藤裕介と聞き、これはなんとかしなくてはと少し無理をして引き受けてしまいました。


佐藤くんに初めて会ったのは10年くらい前。
『ROCK & SNOW』の企画で行なわれた座談会の席でした。
「注目の若手クライマー」という感じで、各所で少しずつ名前を聞き始めたころでした。


座談会では、そののんびりした話し方とは裏腹に、クライミングに対する意見は非常に鋭く、すでに独自のクライミング観を持っているようでした。
「これは掘り出し物だ」と思いながら帰ったものです。


その後は、かの「ギリギリボーイズ」の一員としても活躍。
あっという間に、日本のアルパインクライミングのトップになっていきました。


彼の魅力は、無尽蔵のモチベーションと抜群の安定感。
これだけクライミングに入れ込み続けて飽きない人に会ったのは山野井泰史さん以来です。
そして登りが非常に華麗。軽やかで、どんな厳しいところでも余裕がありかつ正確。
フィジカルなクライミングの才能があるだけでなく、鋭く危険を察知する動物的な嗅覚もあるように感じます。
まさに「クライミングの才能の塊」という感じです。


昨年から山岳ガイドになったので、記事ではその話を中心に書いています。
取材は、瑞牆山で実際のガイドクライミングに同行させてもらって行ないました。
「いちばんガイドになりそうにない男」と言われ、私もそう思っていたのですが、意外や合っているのかもしれないというのが感想です。


取材では、2年前の「那智の滝事件」など話しにくいこともあえて突っ込んで聞きました。
現在の佐藤裕介を語るには避けて通れない話だと思ったからです。
逃げずにちゃんと答えてくれた佐藤くんに感謝です。
昔から疑問だった家族のことも聞きました。
ここは傑作なので、記事でぜひお読みください。


私は思い入れのあるテーマほど文章が書けなくなってしまうタイプで、
この記事も書き始めてみるとどうにもノリが出ず、3分の2くらい書いた原稿を思い切って全ボツにして一から書き直したりしました。
あっさり書けるだろうと思って引き受けた話だったんですが、意外と苦労してしまいました。
そのぶん、最終的には納得のいくかたちになったと思います。


ちなみに写真も私です。
けっこう自信作だったので、大きく使ってくれた編集部に感謝。
2007年に撮影した錫杖岳の写真もついに日の目を見ることができました。
(この撮影が、私がクライミング撮影に興味をもったきっかけでした)


これまで幾度もインタビューを受けてきた佐藤くんですが、
未出(のはず)の話もたくさん入っています。
ぜひ読んでみてください。



【ボツ写真】


















行動食はいつもタッパーに入れた弁当だそうです。休憩のたびにこれをちょこちょこ食べてました。




2015年10月8日木曜日

日本のクライミングの歴史の扉が開けられる



モアイフェース開拓記①


「瑞牆ガイドブック管理人」が言うとおりのすさまじいクライミングが瑞牆で行なわれています。「モアイフェース開拓記」を読んでいただければわかるのですが、これまでの日本のクライミングの次元を2つか3つすっ飛ばしたようなトライです。


なにはともあれ、この熱すぎるブログを読んでみてください。
クライミングを知らない人はわけがわからないかもしれませんが、どうしようもない熱い思いだけは伝わってくると思います。


私の知り合いがこれを読んで、
「たのもしい若者がいるのですね」
と、まるでおばあさんのようなコメントをくれました。
でも、私もまったく同感なのです。
このような熱い若者がいるのなら日本の未来は明るいと。


幸いにも私、これのファーストレッドポイントトライを見ることができました。
たまたま近くにいて、しかも核心部がほとんど全部見える位置にいたのです。


一連の核心部は、ノープロテクションで小さな結晶のようなホールド頼りに進んでいくライン。
核心部を通過中は獣のように吠え続け、それは瑞牆の森中に響き渡るようでした。
フェイスブックには「火を噴くようなクライミング」と書きましたが、まさにそんな感じ。
最後、ミスして大墜落してしまったのですが、人のクライミングを見て心が震えたのはほんとうに久しぶりでした。


このたびめでたくルートを完登。
しかし岩峰の頂上まではまだ2ピッチあって、
そこはさらに難しくなるというのです。

「骨は折れても心は折れないよう頑張らねば。」

致命的なケガをしない範囲でギリギリの線を攻めていってほしい……と思います。



























ファーストトライのときの写真。ここですでに5〜6m?のランナウト。見ているこちらもドキドキものでした。


2015年10月4日日曜日

『Fall Line』に記事書きました


写真は私の本棚のなかで「コア・ゾーン」と呼ばれている箇所です。
要するに、クライミングを中心としたコアスポーツの本の置き場というわけです。


その一角にバックカントリーコーナーがありまして、
そこに『Fall Line』という雑誌が十数冊並んでいます。
最初に買ったのは2004年。
基本年1回刊なので、コツコツ集めて十数冊になりました。
これは必ずしも資料というわけではなく、趣味です、趣味。
とにかく美しい雑誌で、そのファンなのです。


このたび、その雑誌に記事を書かせていただきました。
雑誌に自分の文章が載ったり名前が出たりしても何も感じなくなって久しいですが、
『Fall Line』に載るというのは特別な感慨があります。
というわけで、ここで自慢するものであります。



書いたのはアウトドアメーカー「パタゴニア」の環境理念について。
なかなか重たいテーマで苦労しましたが、6000字書いております。
めちゃめちゃ凝った年表も作りました。


記事冒頭の写真は、1972年に出た伝説のシュイナード・イクイップメント第一号カタログ(の復刻)。
写真も自分で撮ったのですが、カラビナは私物のシュイナード・イクイップメント製。
カタログのページを押さえるためにふと思いついて置いてみたところ、絵的にも決まりました。


内容からするとカラビナよりスリングチョックのほうが合っているんですが、
さすがにそれは持っていないし、ページができあがってから気づいてしまったので、
持っている人を探す時間もありませんでした。
内容だけでなく、形とか色合い的にもいいアクセントになったはずなんだけどなあ。
それだけが残念。


ところで、冒頭のコア・ゾーンの写真の真ん中あたりに
「95スキーマップル東日本」という本が写っています。
スキー場のガイドブックなのですが、これはすさまじい本です。
どうすさまじいのかはひとことで説明するのが困難です。
ジャンルは違いますが、私のガイドブック作りのベンチマークとなっているのがこの本です。
とはいえ、到底このクオリティにかなうものは作れたためしがありません。
もう二度とこのレベルのガイドブックは出ないのではないかとさえ思います。
この本を作ったのは寺倉力さんという編集者兼ライター。
じつは『Fall Line』のメイン編集者でもあるのです。
雑誌にしろガイドブックにしろ、寺倉さんのクオリティに追いつくことが私の目標でもあります。


さてそのFall Lineは昨日3日発売。
ぜひ見てください!